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2006年09月01日

●美しい国へ

安倍晋三氏の著書『美しい国へ』(文春新書)を読んだ。
 
美しい国へ

 
我が国の次の首相を担うかもしれない方なので、日本という国がこれからどのような方向へ進もうとしているのか、知っておきたいと思ったからだ。
 
御本人にお会いしたことがないので本を読んだ限りであるが、日本に対する愛国心を強く持っていらっしゃる方であることがよく分かった。
国民が日本という国に誇りと自信を感じられる国づくりをしたい、国際社会で認められ日本ならではの役割を果たせる国づくりをしたい、そう考えられていることも強く伝わってきた。
 
 
ただ、木を見て森を見ずというか、具体的なビジョンとそのための戦略が不明確で、今の日本社会が抱える課題について戦術ベースの個別対処が書き並べられていて、その個々の施策に矛盾点が数多く見受けられたことが少し不安になった。
 
戦後日本が辿ってきた歴史、その結果の今、国家の概念、日米同盟、日中関係については、事実ベースでの出来事やそれに対する安倍さんの考え(というより感想)が中心に書かれているので、「なるほど」と参考知識としては読むことが出来る。
 
 
 
しかしながら、これまでに日本が経験してこなかった「少子高齢化」「教育」といった新たな問題については安倍さんなりの考えと政策が述べられているのだが、疑問に感じる点が多々ある。
 
 
例えば『年金』についての記述、
 
①「年金はお得だ、1/2は国が負担してくれる」
基礎年金の給付には税金が投入されている。今は給付額の1/3が税金で賄われ2/3が加入者の納付分で賄われているが、2004年度改革でこの税金部分が1/2に引き上げられることになった。2009年度からは、“自分が払うのは半分だけ、残りの半分は国が補填”することになる。
⇒そもそも税金は国民の財布から出たものなので、税金部分が1/3であろうと1/2であろうと100%国民負担で何も変わらない。
 
②「(厚生)年金は払った額の2倍受け取れる」
毎月従業員が負担する額と同額の保険料を会社が負担しているから、従業員は支払った額の2倍が受け取れる。
⇒年金は自分が支払ったものがプール(および運用)されて戻ってくる“貯蓄型”でなく、下の世代が支払ったものが上の世代へ支払われる“分配型”であるのに、“貯蓄型”ベースの理論。将来の若者が支払う、もしくは制度そのものが存在する保証がない。
⇒そもそも、「会社が支払うお金」=「従業員が稼いだお金」なので、払った額の2倍受け取れるとは言えない。

 
③「年金は破綻しない」
保険料を段階的に上げることを決め、給付を引き下げたことで安定した。集めたお金を分配するシステムであるため、会社経営の破綻とは違って加入している皆が「破綻させない」という意思さえ持てばこのシステムは破綻しない。
⇒政治家含め国民の年金未払率が上昇している中、明確な施策なく精神論に終始するのみ。
 
と政策理論を展開させている。
 
 
何故このような誰でも分かるような子供騙しを展開するのだろうか。
国民を馬鹿にしているのではないだろうかと誤解されてもおかしくない見解が多々見受けられる。
 
  
 
全て読み終えた結果、単に選挙を意識した付け焼刃的な内容であるように感じられ、とても残念に思った。
他政党の失敗を取り上げ強調する場面が多く、かといって自政党そして御自身の政策について国家戦略ベースで明確に語られることも無かった。
 
日本に本当の政治家は現れるのだろうか。
自分自身、日本という国への愛国心と誇りはあるが、自信という面では逆に不安にさせられる本だった。
 

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