●グラミン銀行ムハマド・ユヌス総裁
バングラデシュのグラミン銀行総裁であるムハマド・ユヌス氏が、今年のノーベル平和賞を受賞した。
ここ10年近く“ノーベル平和賞に最も近い男”と言われてきた人だけに、「遂にこの日がきた」と思われた方も多いかもしれない。
ユヌス氏は世界で最貧国といわれるバングラデシュで、貧困撲滅と人々(特に女性)の社会的自立を支援する銀行を創設し、全人口の1/4である約1,200万人の人々を貧困から救ったことで有名。
担保を取らずに5人組のグループで連帯責任を負う形で助け合いのシステムを作り、そして毎週一定額を分割返済する仕組みを採用することで返済率は98%を維持している。
当初、彼がグラミン銀行を創設する前、彼は商業銀行を訪れ貧困層への貸付けを依頼したが、「貧困層は信用できないし、担保も取れないので貸し倒れリスクが高く、融資が出来ない」と断られ、自ら銀行を創立するに至った。
ところが今や年利20%で融資を行いながらも担保を取らないグラミン銀行が、基本的に担保をベースに貸付を行っている世界中のどの銀行よりも回収率が高いという結果を見せている。
ユヌス氏が作り出したこの仕組みは「マイクロ・クレジット」と呼ばれ、世界各国で貧困層向けの融資活動のモデルとして採用され、成果を上げている。
ビジネスとは、社会に貢献し人々を幸せにすることで、適正な利益を得ながら企業も成長し、更に社会へ還元していくサイクルを生み出すもの。
グラミン銀行はそのビジネスの基本を忠実に押さえ、そこに更なる公正明大な「貧困撲滅」という理念が社会的意義の面から評価され、今回のノーベル平和賞の受賞へとつながった。
氏の功績は、利益至上主義の罠に陥りやすい企業家にとって、“ビジネスの社会的意義”について気付かせてくれる。
ムハマド・ユヌス自伝―貧困なき世界をめざす銀行家
著書も「自分がビジネスを通して如何なる価値を社会に提供できるだろうか」ということを考えさせてくれる良本だった。



